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アキラのMHXX日記

まったりドタバタで大笑いしながらモンハンをやるチームアキラの日常をお送りします。

狩猟物語〜名砲と呼ばれる男〜

※注意
この物語は、モンスターハンターの二次創作です。


独自設定、独自解釈、世界観に合わない表現などが含まれている可能性があります。それらの点に関して大丈夫だ、問題ない。という方のみご閲覧ください。そういうのはちょっと、という方は「逃げろ!勝てるわけがない!」

ではでは、どうぞごゆっくりお楽しみください。





狩猟物語 ~名砲と呼ばれる男~




古い話をしようと思う。
これはまだ、ボウガンという武器がハンターたちの間で普及していなかった時代の、古い古い話だ。そして、この俺がまだ猟犬と呼ばれていた頃の話だ。

俺は生来、どうにも臆病な性質(たち)だった。我ながら、よくもまぁハンターなんていう死と隣り合わせの職業を志したものだと思うよ。俺の両親は、行商で各地を渡り歩くなかなかに名の通った商売人だった。その隊商に混じって、俺はよくあちこちへ連れていってもらったものさ。ゆくゆくは親の後を継ぎ、俺も商人になるのを夢見ていた。
知らない土地、知らない人間、知らない名産物や物品に出逢うのは、どれだけ胸が躍るだろうか。そんな夢想を抱きながら、その日も俺は両親の率いる隊商と共に砂漠を横断していた。身を焦がすような強い陽射し、蜃気楼のように揺らめく遥か彼方のオアシス、荷馬車を引くアプトノスが焼けた砂を踏む音、車輪の軋み、今でもよく覚えている。
砂漠には、小型の肉食竜であるゲネポスや魚竜種のガレオスが生息している。そういうやつらへの備えとして、隊商には傭兵が数人付き添っていた。彼らがクーラードリンクを飲みながら周囲を警戒していた姿は、少しばかり怖かった。
当時、危険なモンスターの姿はその砂漠には確認されておらず、比較的安全な旅だった。ゲネポス程度のモンスターならば傭兵たちでも対処できるし、ガレオスには音爆弾が有効だ。いまのところ脅威となるのは、こいつらだけだった。
俺は荷馬車に揺られながら、つばの大きな帽子の影から目を覗かせ、雄大な砂漠の景色を見渡していた。自慢じゃないが、俺は目が良かった。どれほど遠くのものでも識別できたし、それがどういう動きをしているのかも分かった。
ぼんやりと周囲を見回していたとき、黄色い砂漠の大地に、一瞬だけ黒い岩が視えたような気がした。もちろん、気のせいだと思ったよ。なんせほんの一瞬だ。それも、双眼鏡を使わなければ視えないほど遠く、しかも砂塵で遠方は霞んでいた。
俺はごろんと荷馬車に寝転がった。頭のすぐ近くでは、タルが細かな固い音を鳴らしていた。車輪が転がるわずかな振動が、俺の身体を揺らした。
だが、その振動とタルの音が途中から、徐々に大きくなり始めた。その異変に気付いたときには、俺の身体は宙に浮き、視界に映り込んでいた蒼空は傾いて、いつの間にか自分の下になってしまった砂漠の黄色い地面が侵蝕し、そのまま吸い寄せられるように俺は大地に真っ逆さま。そして俺は、激突と同時に、気を失った。

目が覚めたとき、俺は全てを失っていた。家族も、財産も、全て。聞いた話では、隊商は突如として現れた黒いディアブロスに襲われて全滅したそうだ。繁殖期のメスのディアブロスのみが変色し、その個体は通常種よりも凶暴性を増す。運の悪いことに、繁殖のために移動してきた黒いディアブロスと俺たちの隊商がかち合ってしまったらしい。
俺は幸いにも打ち上げられた荷車の下敷きになり、奴の目からも、強い太陽の光からも覆い隠されて、一命を取りとめた。
俺は、誓った。俺から全てを奪い去ったディアブロスと、もう一度、対峙する。その時、俺はハンターとなることを決めた。もちろんハンターはハンターズギルドに属し、その管轄の下で狩猟を行わなければならない。黒いディアブロスの狩猟を任されるようなハンターになるまでは、怨敵の前に立つことすら叶わない。
臆病な俺にとって、立ちはだかる試練は相当に厳しいものだった。得物一振り引っ提げて、モンスターどもに肉薄するのは、相当の勇気と気力を要した。俺には、ランポスを討伐するのが精いっぱいだった。そこで、俺は考えた。俺は目が良い。ならば、モンスターどもが相手でも十分に通用する銃火器を開発すればいいのだ。
俺は研究を始めた。良質な鉱石を掘り、逆火を防ぐのに必要なモンスターの素材を集め、火薬と弾丸を作った。そしてついに、俺だけの一丁が組み上がった。俺はすぐにギルドで名を上げ始めた。モンスターが肉薄する仲間たちに気を取られている隙を突いて、弾丸を射ち込むという戦術は安全性が高く、画期的だった。何度か、砲の作成方法を訊かれたこともあったが、俺は断じて教えようとはしなかった。全ては、あの黒いディアブロスの狩猟依頼が、当時唯一のガンナーであった、俺に回って来るように。
俺の全ては、あの黒いディアブロスの狩猟のためだけに捧げていた。そのために俺は、極めて難度の高い依頼ばかりを選ぶようになっていった。ギルドに「あのボウガンを使うハンターに任せた依頼は、どれだけ困難でも必ず達成される。」と、認識させるために。

ある時、ともにクエストへ赴いた仲間が、仲間をかばって、死んだ。相手は、天空の王者リオレウスだった。彼は骨の一本も残さずに、この世から灰となって消えた。火の国を襲っていた凶暴な個体だった。ギルドでも火の国でも、彼は人々を救うために、命と力の象徴でもある飛竜に挑み、散った、英雄であると、讃えられた。
俺は、なんとも言えなかった。死んではいけない。死んで英雄になったとして、それが何になるのか。死ねば自分の全てが終わる。死を、讃えることなど、その時の俺にはできなかった。目的の死、それ以外の死とは、俺にとっては、ただの負けだった。

仲間が目の前で世界から跡形も無く消え去った光景は、俺の心に深い傷となって残った。それから俺は、誰かと共に狩猟へ赴くことをやめた。
ただただ、的確に相手の急所目掛けて必殺の弾丸を射込み、どんなモンスターでも片っ端からただ一人で仕留めた。そんな俺を、人はいつしか【猟犬】と呼ぶようになった。そこには、多少の蔑みも入っていただろう。誰とも会話をせず、ただ一人で猟犬のように狩りだけを行う俺を、みな気味悪がっていたから。

やがて、その時が来た。
俺が全てを失った砂漠に黒いディアブロスが現れ、近隣の集落に多大な被害が出始めたのだ。砂漠の村の長から、ギルドを通じて正式な依頼が発行された。俺はすぐ名乗りを上げたが、ギルドは承認しなかった。あまりにもディアブロスの凶暴性が高いため、討伐隊を編成することに決まったという。そのメンバーに、俺も指名された。俺はしぶしぶ、了解した。
討伐隊のメンバーは俺を含め四人。ランスを使う学者兼ハンターの隊長、片手剣を使うココット村出身のハンター、そして大剣を使う俺と同じくらいの歳の若いハンター、この三人と、狩猟を共にすることとなった。形はどうあれ、あの時のあの場所で、黒いディアブロスと対峙できる。そのことに俺の身体は打ち震えていた。

ハンターとは、生きるために狩猟をする。
俺を除く他の三人もそうだ。だが、俺は少しばかり違っていた。

俺は、死ぬために、黒いディアブロスの狩猟に臨んでいた。
気が違っていると言われるかもしれない。だが、復讐を果たし、怨敵を失ってしまえば、俺は何のために生きるのか分からなくなってしまう。そんな漠然とした恐怖があって、俺はやつにハンターとしてではなく、一匹のオスとして殺されることを望んでいた。それが俺の、目的の死、だった。俺が死んだ後のことなど、俺は死んでしまっているのだから知ったことではない。何故なら俺は、何も持っていないのだから。

 

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狩猟は困難を極めた。
ディアブロス。悪魔の名を冠する砂漠の暴君。その凶暴性を増した亜種は、これまで命のやり取りをしたどんなモンスターよりも強大だった。その巨体からは想像もできない速度で暴れ回り、遠くでも耳をつんざく雄叫びは根源的な恐怖を呼び覚ます。やつが天に向かって吠える雄姿は、凶悪ながらも美しかった。
砂色一色の砂漠の中で、ひときわ目立つ黒い甲殻。爛々と輝く紫水晶の瞳。そして、大地を、天をも穿つ黒い双角。こいつに負けるのならば、本望だった。

やつがまた、天に向かって咆哮した。
その凄まじいまでの音圧に、若い大剣使いのハンターが硬直してしまっている。そのことは、スコープ越しによく分かった。

「馬鹿野郎が…!」

気付けば俺は、愛銃を放り投げていた。そしてそのまま、硬直する若いハンターに向かって走り出していた。黒いディアブロスが、大きく尻尾を振りかぶる。俺は、飛び込むようにして、若いハンターを突き飛ばした。その瞬間に、大岩が天から大地に落下するような勢いでもって、ディアブロスの尻尾が打ち付けられる。それは、俺の右脚を直撃した。
骨が折れるとか、そんな生易しいもんじゃない。俺の右脚の膝から下は、ぐしゃりと潰れて失くなってしまった。我に返った若いハンターが奮戦し、片手剣のハンターが閃光玉を投げ、ランスの隊長が執拗に追い詰めて、追い払うことには成功した。
俺は、うなだれて集会所へ帰った。クエストは途中でリタイア。ハンター生命は終わり、死ぬに死に切れなかった。見事討伐を果たして帰ってきた討伐隊のメンバーから俺の活躍が語られ、俺も英雄の仲間入りを果たしたが、その喝采も虚しいだけだった。

それから俺は、何をするでもなく、死んだように生活していた。現役時代の装備や道具もそのままで、持っているものを売っては金にして、空虚な日々を送っていた。
そんなある日、あの若いハンターが俺の元を訪ねてきた。曰く、ボウガンを教えてほしい、と。退屈していた俺は暇潰しに、ボウガンを教えてやった。組み方、弾の調合、扱い方から全て。そうするとどうだ。次から次へと俺を慕って、ボウガンを習いたいというハンターが日増しに増えていった。俺はそこに、一つの生きがいを見出した。
ボウガンは、これまでの狩猟を大きく変える。より安全に、より的確に、より戦略的に狩猟を行うことができる。それがゆくゆくは、俺の目に焼き付いて消えない、あんな悲劇を回避するのに役立つかもしれない。俺は一念発起し、このボウガンの技術と製造方法、その理念などを全て、ギルドと武具職人に伝授した。
狩猟に革命を起こした俺の功績を讃えて、ギルドは俺の使っていたボウガンの型に、俺の名を与えてくれた。それはボウガンが一般的になった今でも、素人から玄人まで幅広く扱える名砲として、この世に残っている。

 

 

 

 




ああ、俺の名前を、まだ言っていなかったな。
俺の名は、アルバレスト。アルバレストだ。